「共感から共創へ」——都市と地域が対等な関係を築くために|港区×神石高原町 共創DAO開催レポート【後編】

地域と都市をつなぐ取り組みを、一度きりの交流で終わらせないためには、何が必要なのでしょうか。

港区×神石高原町 共創DAO」キックオフの後半では、神石高原町の入江嘉則町長と、港区立産業振興センターの西岡篤史副センター長によるクロスディスカッションが行われました。

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受け継いできた営みを、次の事業へ|港区×神石高原町 共創DAO開催レポート【前編】

話題となったのは、地域と都市の人材を結びつけることだけではありません。その出会いを、双方にとって意味のある、継続的な関係へどう育てていくか。お二人の言葉から、このプロジェクトが目指す共創のあり方が見えてきました。

その中心にあったのが、西岡副センター長の語った「共感から共創へ」という言葉です。

港区立産業振興センター 西岡篤史副センター長(左)と、神石高原町 入江嘉則町長(右)

支援する・されるを超えた関係へ

入江町長が触れたのは、地域の中だけでは気づきにくい価値についてです。

地域で暮らし、事業を続けているからこそ、その土地にある技術や文化、資源が日常の一部となり、外から見たときの価値や新たな可能性に気づきにくいことがあります。そこへ都市部の人材が異なる経験や視点を持ち込むことで、地域にあるものを見つめ直し、新たな価値として捉え直せる可能性があります。

ただし、それは都市側が地域を一方的に「助ける」という関係ではありません。

地域が培ってきた知識や技術、地域資源と、都市部の人材が持つ専門性や経験を掛け合わせる。そのためには、双方にとって関わる意味があり、互いを尊重できる関係を築くことが欠かせません。

どちらかが支援する側、もう一方が支援される側になるのではなく、同じ課題に向き合うパートナーになる。

その対等な関係が、継続的な共創の土台になります。

神石高原町 入江嘉則町長

都市の経験を、地域産業につなぐ

西岡副センター長からは、港区側がこのプロジェクトを通じて目指している関係について語られました。

港区には、多様な企業で働く人や、さまざまな分野の経験、専門知識、ネットワークを持つ人が集まっています。本プロジェクトは、そうした都市部の人材に地域の仕事を紹介したり、地域へ人を呼び込んだりすることだけを目的としたものではありません。

都市部に暮らし、働きながら、自分の経験や専門性を生かして地域の産業に関わる。その接点を一度きりで終わらせず、地域との継続的な関係へ育てていくことが目指されています。

地域には、農業、観光、製造業をはじめ、その土地の資源と切り離すことのできない産業があります。こうした産業を次の世代へつないでいくためには、地域の内側にある知恵に加えて、外部の経験や視点を取り入れることも重要です。

一方で、都市部の人材が必ずしも地域へ移り住む必要はありません。それぞれの生活や仕事を続けながら、自分にできる方法で地域と関わることもできます。

移住だけを前提とせず、都市部の人材と地域の産業との間に、長く続く関係をつくる。

都市部に暮らし、働きながら、自分の経験や専門性を生かして地域の産業と継続的に関わる。そうした関係を育てることは、「関係人口」の創出にもつながります。

港区立産業振興センター 西岡篤史副センター長

地域の課題を、自分事として捉える

都市部の人材と地域事業者を結びつけるだけで、共創が始まるわけではありません。

依頼された仕事をこなし、成果物を納めて終わる関係であれば、その仕事が完了した時点で接点も失われてしまう可能性があります。関係を続けていくには、参加する人自身が、地域の課題や事業者の思いを理解することが重要です。

そのために必要なのが、地域事業者との対話です。

事業者が何を大切にしてきたのか。なぜ、その課題に向き合っているのか。これから何を残し、何を変えようとしているのか。資料やデータだけでは捉えきれない背景を、直接言葉を交わしながら知っていきます。

地域の課題を自分事として考えるきっかけは、その課題に向き合う人と、背景にある思いを知ることで、より具体的なものになります。

対話を重ねるなかで、「依頼されたから取り組む」という状態から、「自分も一緒に考えたい」という主体的な関わりへ変わっていきます。

「共感から共創へ」

こうした関係づくりについて、西岡副センター長が示したのが「共感から共創へ」という言葉でした。

ここでいう共感は、地域の状況を知り、応援したいと感じることだけではありません。

地域事業者の言葉に触れ、その背景にある思いや大切にしているものを知る。そこから、自分の経験や仕事との接点を見つけ、地域の課題を自分にも関わる問いとして考え始める。その過程を含めた共感です。

共感が生まれると、関わり方も変わります。

地域について調べる。事業者と対話する。現地を訪れる。自分の専門性を生かした提案を考える。小さく試してみる。そうした主体的な行動の積み重ねが、地域と都市が一緒に新しい価値をつくる共創につながっていきます。

相手を知ることから生まれた共感が、主体的な行動へ変わる。その先に、共創があります。

「共感から共創へ」という言葉には、本プロジェクトが目指す関係づくりのプロセスが表れています。

事業期間が終わっても残る関係を

クロスディスカッションでは、補助金や委託事業などをきっかけに始まった取り組みを、事業期間の終了後もどう継続していくかという課題にも触れられました。

こうした制度は、新しい取り組みを始めるうえで重要な役割を果たします。一方で、期間や予算が終了した後も活動を続けるには、制度だけに依存しない関係を育てる必要があります。

地域事業者と都市部の人材が直接つながり、双方にとって取り組む意味や価値を見いだす。行政は、その出会いや活動が生まれるための環境を整える。こうした関係が育てば、事業期間の終了後も、それぞれの意思によって取り組みを続けられる可能性があります。

プロジェクトの成果は、期間中につくられた企画やサービスだけではありません。その後も相談し、協力し合える人と人とのつながりが残ることも、大切な成果の一つです。

共創の出発点にあるもの

本プロジェクトでは、地域との接点をつくるためにデジタルの仕組みも活用されます。

ただし、仕組みだけで共創が生まれるわけではありません。人を動かす出発点にあるのは、相手を知り、その思いに触れることで生まれる共感です。

地域の事業者と都市部の人材が言葉を交わし、それぞれが持つ経験や知恵を知る。そのなかで地域の課題が自分事へと変わり、一緒に取り組もうとする意志が生まれます。そして、その意志を継続的な活動につなげるために、デジタルや行政の仕組みが支えとなります。

入江町長と西岡副センター長のクロスディスカッションから見えてきたのは、都市と地域のどちらか一方が答えを持っているわけではないということでした。

互いの背景や考えを知り、それぞれが持つものを持ち寄りながら、同じ問いに向き合っていく。

地域と都市が互いを知ることから始まった今回のキックオフ。その共感を具体的な行動へ変えていく、「共感から共創へ」の歩みがここから始まります。

関連リンク:港区×神石高原町 共創DAO 特設サイト