Webメディア『Data for Japan』編集部が、企業のデータ活用による変革や地方創生のリアルに迫るインタビューシリーズ。今回は、企業のコミュニケーションを支えるビジネス電話の世界に「データによる可視化」という革命を起こした、株式会社グッドリレーションズの代表取締役・山村 諭 氏にお話を伺いました。
旧来の設置型ビジネスフォンからクラウドPBX(クラウド型の企業向け電話システム)『GoodLine』へと切り替えることで、どのようなデータが生まれ、それがどのように地方企業や自治体の経営・業務課題を解決していくのか。単なる「便利な通話システム」の枠を超え、日常のコミュニケーションを経営資産へと変換していく同社の思想と、地方がデータ活用の一歩目を踏み出すための本質的なアプローチについて、たっぷりとお届けします。

株式会社グッドリレーションズ 代表取締役 山村諭氏
1.変わらない電話インフラに目を向け、ブラックボックスを解消する
現在、多くの企業が社内システムのクラウド化や、業務効率化を目指す「DX」に注力しています。パソコンの性能が向上し、さまざまな業務ツールが安価で便利に提供されるようになった一方で、実は何十年もの間、仕組みも価格もほとんど変わっていなかった領域が存在します。それが「企業の電話(ビジネスフォン)」です。
従来のビジネスフォンは、オフィスに物理的な主装置(PBX)を設置し、そこから有線の電話線を各デスクへと引き回す仕組みが一般的でした。このインフラは非常に専門的でネットワークも絡んでくるため、多くの企業にとって「よくわからない領域」であり、電気通信事業者や認定代理店にすべてを丸投げする状態が続いていたのです。その結果、技術的には新しいことができる時代になっても、古い仕組みのまま何度も機器を入れ替えている会社が少なくありませんでした。
グッドリレーションズの代表取締役である山村 諭 氏(以下、山村氏)は、自身がオフィス向け通信機器の営業を経験する中で、この業界構造とインフラの制約に強い課題意識を抱いたと言います。
「社内の他のソリューションに関しては、自分たちで検証したり構築したりしようという目が向くのですが、電話に関してはブラックボックスになりがちです。誰が、何を、どういう応対をしているのか。どこに、どういう状況で、どれだけの連絡が来ているのかといったことが、簡易的に確認できないアナログな領域のまま残されていました」
電話対応は長年「その場にいる人が取るもの」という前提で運用されており、どれだけの電話がかかってきているのか、取りこぼし(不通件数)がどれだけ発生しているのかといった実態すら把握されていませんでした。つまり、企業の重要な顧客接点でありながら、すべてが担当者の「感覚」や「経験」に依存していたのです。
この構造的な課題を解決し、場所に縛られない柔軟な働き方と業務変革を実現するために開発されたのが、クラウドPBX『GoodLine』です。電話システムをコントロールする主装置をソフトウェアとしてクラウド上に構築することで、従来の物理的な回線や拠点に依存した運用から企業を解放することを目指したのです。

2.コロナ禍で加速した認知と、単なる「通話手段」を超えた4つの強み
十数年前にサービスを開始した当初は、世の中に「クラウドPBX」という概念自体がほとんど浸透していませんでした。そのため、まずはスタートアップや小規模な企業を対象に、面倒な回線工事をすることなく「スマートフォンで簡単に会社の市外局番を使って発着信ができるアプリ」という分かりやすいイメージで打ち出していきました。
その流れが大きく変わったのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。
テレワークへの移行が急速に求められる中で、「会社に行かなければオフィスの電話が取れない」「自宅にいるとお客様からの問い合わせに対応できない」という課題が日本中の企業で一斉に顕在化しました。インターネット通信を経由してどこでも会社の電話番号で受発信ができるクラウドPBXは、まさにこの危機のソリューションとして一気に認知度を高めることになります。
しかし、市場に多くの類似サービスが登場する中で、同社の『GoodLine』が現在までに10,000社以上の導入実績を誇り、圧倒的な支持を集めている理由は、単に「どこでも電話が繋がる」という便利さだけにとどまらない、明確な4つの強みがあるからです。
1_徹底した「見える化」とリアルタイムモニタリング
同社が最も重視しているのが、電話業務の可視化です。電話番号ごとの状況をグラフや表で細かく分析し、数値として出力できるため、過去のデータとの比較や経営指標としての活用が容易になります。 さらに強力なのが「リアルタイムでのモニタリング機能」です。社外や在宅で稼働している社員が「今、誰と、いつから通話しているのか」「今は休憩中なのか」といったステータスが管理画面上で目視できます。もし長時間の通話に至っている場合はアラートを設定し、第三者の上司がその通話内容をリアルタイムで聞きながら会話をサポートすることも可能です。
2. 外部チャットシステムとの柔軟な連携
モニタリング機能に付随して、多くの企業で導入されている「Chatwork(チャットワーク)」「Slack(スラック)」「Microsoft Teams(チームズ)」といった主要なチャットシステムとの連携を実現しています。 誰が電話を受けたのか、いつ通話を開始したのか、あるいはシステムにログインした・休憩に入ったといった稼働情報が自動的にチャットへ通知されるため、離れた場所で働いていてもチーム全体の状況を自然に把握することができます。この機能は、特にコロナ禍におけるリモートワーク環境で「相手の状況が見えない不安を解消してくれる」と多くの企業から高く評価されました。
3. クラウドインフラを守る強固なセキュリティ
通話データや顧客との会話の録音ファイルがクラウド上に蓄積されるという特性上、不正アクセスなどのリスクに対するセキュリティ対策は極めて重要になります。 同社では、このセキュリティ機能をオプションではなく「基本機能」として最初から強固に用意しています。まだ他社がセキュリティの重要性に十分に目を向けていなかった黎明期から、データを扱う基盤としての安全性を愚直に追求し続けてきたことが、現在の高い信頼性に繋がっています。
4. ベンダーロックインを排除した圧倒的な「汎用性」
一般的なクラウド電話サービスでは、自社が開発した専用アプリしか使えなかったり、電話回線や番号自体もその事業者のものに縛られてしまい、他社への移行ができないような制約(再販縛り)が設けられているケースがほとんどです。 これに対して『GoodLine』は、コントロールを担う主装置(ソフトウェア)のみを提供する柔軟なスタンスを取っています。そのため、インターネット対応の据え置き型電話機、スマートフォンアプリ、パソコンで利用するソフトフォンなど、顧客の環境やスペックに合わせて自由にハードウェアやアプリを選択できます。 例えば、OS(iOSやAndroid)のアップデートによって特定のアプリに一時的な不具合が生じた場合でも、自社縛りのない同社であれば「代替案のアプリを一時的に適用して業務を継続する」といったリスクヘッジが可能になります。顧客の自由度を最優先にするこの「縛らない汎用性」こそが、業務インフラとしての安心感を担保しているのです。
3.データを「能動的」に見にいかない現場のための仕組みづくり
どれほど豊富なデータが取得でき、優れた分析機能が備わっていても、それを扱う人間のITリテラシーが低かったり、ツールに対する苦手意識があったりすれば、データは宝の持ち腐れになってしまいます。機能が多すぎるがゆえに、逆に現場が混乱してしまうというのは、データ活用を推進しようとする企業や自治体が必ず直面する壁です。
グッドリレーションズはこの課題を深く認識しており、システムのUI(ユーザーインターフェース)を徹底的に磨き上げ、感覚的かつ視覚的に分かりやすく操作できるデザインにこだわっています。
しかし、山村氏はさらにその先にある「人間の行動特性」に着目した工夫を行っています。
「いくら見やすい管理画面を作っても、結局は『電話』のシステムです。現場の皆さんは日々の業務で忙しいですから、わざわざ自分から管理画面を能動的に見に行くという行為自体が、ハードルになってしまいます」
そこで『GoodLine』が取り入れたのが、データを能動的に「見に行かせる」のではなく、必要なデータを「自動的に届ける」というプッシュ型の仕組みです。
企業や自治体は、営業部、カスタマーサポート、あるいは特定の問い合わせ窓口など、組織の単位ごとにあらかじめ指定した条件を設定しておくことができます。そうすると、システム側が「その日にどれだけの電話がかかってきて、どれだけを取りこぼしてしまったのか」「それぞれのスタッフがどれくらい稼働したのか」というサマリーデータを自動で集計し、指定した日時に通知してくれるのです。
この自動通知機能によって、管理者が忙しい手を止めてシステムにログインしなくても、日々の振り返りや状況把握がルーティン化されます。データを意識して「活用しよう」と身構えるのではなく、日常の業務フローの中にデータが自然と溶け込んでくる環境を作ること。これこそが、ツールアレルギーを持つ現場でも挫折せずにデータ活用を続けられる、同社の大きなこだわりです。
5.データを可視化することで生まれる「経営判断」と「現場の守り」
では、実際にこの仕組みを導入した企業では、どのような変化や成果が生まれているのでしょうか。同社の事前質問票の回答とインタビューからは、単なるコスト削減やテレワーク対応にとどまらない、本質的な意思決定の事例が見えてきます。
ある複数店舗を展開するオーナー企業では、それまで各店舗の電話状況が全く把握できておらず、現場からの報告も「今日は忙しかった」「問い合わせが多かった気がする」といった感覚的なものに頼らざるを得ませんでした。 しかし『GoodLine』の導入によって、すべての受発信や不通件数が明確な数値として一元管理できるようになりました。その結果、「特定の地域に広告を出した際、実際にどれだけの電話反響があったのか」を正確に測定できるようになり、マーケティング投資の最適化という重要な経営判断が可能になったのです。
さらに、データは「現場のリソースの平準化」にも大きく貢献します。特定の店舗や時間帯に受電が集中し、自前のスタッフだけでは対応しきれず機会損失(取りこぼし)が発生していることがデータで可視化されれば、ウェブの管理画面から即座に着信設定を変更し、他のリソースが余っている店舗や拠点で代わりに電話を受けるといった柔軟な運用体制を構築できます。
一方で、社内でデータによる「見える化」を進めようとすると、現場の従業員から「常に監視されているのではないか」「自分のやり方を覗き見されているようで気持ち悪い」といった反発や心理的抵抗が生まれることも少なくありません。
この現場の懸念に対し、システム的には「権限の細分化」で対応しています。すべてのスタッフが全データにアクセスできるわけではなく、一般社員、管理職、経営者などの階層や役割に応じて、通話履歴の閲覧範囲や全通話に設定されている録音ファイルの再生権限を細かく制限することができます。
そして何よりも重要なのは、データの蓄積が「従業員を監視するため」ではなく、最終的には「現場を守り、組織を強くするため」にあるという共通認識を持つことです。
山村氏は、電話データを残しておくことの隠れた価値についてこう語ります。
「営業活動において、ハイパフォーマーのノウハウを共有して属人化を下げるという組織的なメリットはもちろんありますが、それ以上に大きいのはリスクヘッジの側面です。例えば、お客様との間でクレームが発生してしまったときや、『言った・言わない』のトラブルになったとき、正確な録音データが残っていれば、現場のスタッフが理不尽に責められるのを防ぐことができます。また、失敗してしまった対応も、教訓として社内教育に活かすことができる。選択肢としてそのデータが『ある』という環境自体が、組織にとって重要な防壁になるのです」

6.「人手不足」と「地域格差」を解決する地方創生のインフラへ
株式会社データ・エージェンシーが運営する『Data for Japan』が、今回のインタビューを通じて最も深く掘り下げたかったテーマが、このデータ活用がもたらす「地方創生」へのインパクトです。
現在、地方の企業や自治体は、深刻な人口減少、専門人材の不足、そして災害時の事業継続リスク(BCP)といった、非常に複合的で重い課題に直面しています。これらの課題を解決するための切り札として「データ活用」や「テクノロジーの導入」が叫ばれていますが、実際には都市部との情報格差やアレルギーによって、なかなか一歩を踏み出せないのが実情です。
グッドリレーションズのクラウドPBXは、地方企業が都市部と同等の柔軟な働き方を手に入れ、持続可能な組織づくりを行うための強力な武器となっています。
その最も具体的な例が、地方における「コールセンターやバックオフィスの構築」です。 多くの企業において、本社機能やマーケティングの拠点は都心部に置かれていますが、採用のしやすさや人件費のコスト効率を考慮して、地方にオペレーションセンターを設置するケースが増えています。 従来のシステムであれば、拠点が離れることで情報の伝達が遅れたり、地方側の稼働実態が見えにくくなり、マネジメントの難易度が上がってしまうという問題がありました。しかし『GoodLine』を活用すれば、地方の拠点であっても本社のメインの電話番号を使って受発信ができ、その対応状況や通話データはリアルタイムで本社の管理者と共有されます。
これにより、都心部と地方という物理的な距離を完全にゼロにし、あたかも同じオフィスの隣のデスクに座っているかのような一体感を持って業務を運営できるようになります。これは、地方に「場所に依存しない安定した雇用」を創出することに直結しており、若者の流出防止やUターン・Iターン人材の受け皿づくりという観点からも、非常に大きな波及効果をもたらしています。
さらに、この価値は民間企業だけにとどまりません。地域特有の住民サービスや現場業務、例えば「在宅医療」や「訪問看護」といった、スタッフが常に地域を移動している現場でも大きな成果を上げています。 これまでは、訪問中のスタッフへの緊急連絡や取り次ぎが煩雑になり、地域住民を待たせてしまうことが課題となっていましたが、スマートフォンを内線化することで、訪問先や移動中であっても直接連絡を受けて確実な連携ができるようになり、地域の医療・介護サービスの品質向上に大きく貢献しています。
少人数であっても住民や顧客のニーズを取りこぼさず、業務負荷を全員で平準化して持続可能な体制を維持すること。それこそが、テクノロジーとデータの力によって地方の格差を解消する、真の地方創生の姿なのです。

7.AIとの連携が拓く、次世代のコミュニケーション未来像
同社は現在の機能に満足することなく、さらにその先にある「未来像」を見据えて、現在新たな研究開発を猛スピードで進めています。それが、「生成AIとの連携によるデータ分析と改善提案の自動化」です。
現在でも、全通話の録音データを蓄積し、音声をテキスト化する機能自体は提供されています。しかし、日常の膨大な電話の会話をすべて人間の管理者が読み込み、そこから課題を抽出するのには膨大なコストと時間がかかります。また、音声認識の技術が向上しているとはいえ、まだ細かな修正が必要なケースもあり、データを100%活かしきるにはハードルが高いという側面もありました。
グッドリレーションズが今まさに構築しているのは、この音声テキスト化の先に「分析AI」を組み込む仕組みです。
「ただテキスト化するだけでなく、別のAIを使って文言を補正し、その会話の中身を自動で分析させます。そして、その結果として出たデータが『何を意味しているのか』、結果として『次に何をしたらいいのか』という具体的な気づきや改善提案までを自動で生成し、プッシュ型で管理者に届ける仕組みを追求しています」
例えば、「最近、特定の製品に関する解約の問い合わせが○%増えている。その共通の原因はマニュアルの○ページの記述にある可能性が高い」といった、現場の業務課題や住民・顧客の潜在ニーズの傾向(KPI)を、AIがデータから自動で検知して教えてくれる未来です。
これが実現すれば、「データはあるけれど、専門知識がないからどう扱っていいか分からない」と悩んでいた地方企業や自治体であっても、AIが示す明確な示唆(気づき)をベースにするだけで、翌日から迷わずに正しい意思決定を下すことができるようになります。データ活用が、一部の先進的なIT企業だけのものではなく、すべての組織にとって「呼吸するように当たり前のインフラ」になる世界が、もうすぐそこまで来ています。
おわりに:「まずは、集めることから始めよう」
インタビューの最後、山村氏に「データ活用を始めたいけれど、専門人材もいないし、何から手をつけたらいいか分からない」と足踏みしている全国の地方企業や自治体のDX担当者へ向けて、メッセージを求めました。
返ってきたのは、データの本質を突いた、非常にシンプルで力強いアドバイスでした。
「私の考えは非常にシンプルです。まずは、どう活用できるかはさておき、とにかく『データを集める・蓄積する』ということから始めてみてください。それがすべての大前提です」
最初から「このデータをこう分析して、こういう成果を出そう」と完璧な計画を立てようとするから、難しく感じて一歩目が踏出せなくなってしまいます。データ活用の本当の価値は、何か問題が起きたとき、あるいは組織にポジティブな変化があったときに、過去に遡って「参照元としてのデータ」と比較したときに初めて見えてくるものだからです。
毎日、何気なく繰り返している業務のデータを実直に積み重ねていくこと。そうすることで、ある日データが語りかけてくる「変化の兆し」に気づき、それが未来を予測し、組織をより良くするための貴重な知見へと変わっていきます。
同社の提供する『GoodLine』は、まさにその「意識しないデータ収集」を可能にする装置です。スタッフがいつも通りに電話を使い、地域のお客様や住民とコミュニケーションを交わすだけで、その日常の裏側で、勝手に強固なデータ基盤が構築されていきます。
高度なITスキルも、特別な専門人材も必要ありません。地方が次の時代に向けて持続可能な成長を遂げるためのヒントは、実は今皆さんの目の前にある「日々の当たり前の業務」の中に、すでに眠っているのです。まずはその見えない事実を可視化することから、新しい地方創生の物語を始めてみませんか?
【取材協力】株式会社グッドリレーションズ
大阪府大阪市に本社を置き、全国10,000社以上の導入実績を誇るクラウド型ビジネス電話システム『GoodLine』の開発・提供を手がけるコミュニケーションインフラのパイオニア企業。
企業サイト:https://good-relations.jp/
提供サービス(GoodLine):https://good-line.jp/














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