少子高齢化に伴う労働人口の減少は、日本の地方自治体や中小企業にとって極めて深刻な課題です。限られたリソースの中で、いかにして住民サービスを維持し、企業の生産性を向上させるのか。その解決策として多くの組織が「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「データ活用」を掲げていますが、現場では「新しいシステムやツールを導入したものの、使いこなせない」「そもそもどこから手を付ければいいのか分からない」という足踏み状態が続いています。
1999年の創業以来、『「働く」をデザインするアイディアを通じて、人と企業の双方の満足に貢献します。』という企業理念を掲げ、企業の生産性向上やビジネス変革を伴走支援してきたワークスアイディ株式会社 。同社でDX事業を牽引する鈴木健介氏は、「新技術の導入そのものが目的になってはならない」と強く警鐘を鳴らします 。ツールやデータはあくまで「手段」であり、その手前にある「業務の可視化」と「目的の明確化」こそが本質であるという同社の哲学 、そして地方企業や自治体が次の一歩を踏み出すためのヒントについて、事前質問シートとインタビューの内容、そして同社が手がけてきた珠玉の成功事例から詳しく紐解きます。

ワークスアイディ株式会社 鈴木健介氏
1.人材派遣の危機感から生まれた「もう一つの労働力」としてのRPA
ワークスアイディのDX推進の取り組みは、2016年頃のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入から始まりました 。現在でこそ自治体DX推進計画や「自治体2040構想研究会」といった国を挙げた後押しもあり、多くの自治体や地方企業へサービスを拡張していますが 、その原点は同社の基盤事業である「人材派遣業」における強い危機感にありました。
「2045年や2050年の労働人口減少のデータを見据えたとき、人が集まらなければ派遣事業そのものが縮小していく可能性があるという、事業上の重大な問題に直面しました 。しかし、企業の中には派遣スタッフの方々が担ってきたような、属人化した業務が厳然として存在し続けます 。それならば、人が担ってきた業務を可視化・標準化した上で、コンピュータ上でトレースし、次の労働生産力として機能させよう。そう考えてスタートしたのがRPAだったのです。」
当初は社内のプロジェクトチームとして発足し、試行錯誤を繰り返す中で転機となったのが、大手販売パートナー企業との出会いでした 。オペレーションの肥大化と人件費の増加に悩んでいた同パートナー企業へRPAを導入した結果 、年間で1億円以上の人件費削減コスト効果を創出 。この圧倒的な実績が呼び水となり、パートナー企業経由で全国の自治体や中小企業へとその支援の輪を広げていくことになりました。
2.なぜ従来のフローチャートでは改善点が見えないのか
同社がDX支援において何よりも重視しているのが「業務可視化」です。世の中には多くのビジネスプロセス管理(BPM)ツールが存在しますが、ワークスアイディが基盤技術として選定したのが「Hit法」という手法でした。
従来の業務フローチャートといえば、A部門からB部門へ、矢印や記号を用いてアクションの連続を縦横に並べる国際基準のものが一般的です。しかし鈴木氏は、「それでは物の流れしか見えず、どこに無駄があるのか、どれほどの時間がかかっているのかという本質的な改善点が見えてこない」と指摘します。
対して「Hit法」は、徹底して「情報発生源」を起点とします。例えば、1つのデータや依頼の発生を起点として、誰が、どのようなアクションを重ね、それぞれに何分かかっているのかを明確な数値(時間)として落とし込んでいきます。さらに、使用する記号を最小限に絞り込むことで、ITの専門知識のない「現場のノンプログラマー」であっても、一定のルールに基づいて自ら業務をチャート化し、改善点を発見できるようデザインされています。
「私たちが目指すのは、お客様自身による業務の『内製化』です。どんなに優れたITツールであっても、現場の人間が運用できなければ意味がありません。複雑な方法論を押し付けるのではなく、分かりやすく運用に足るものを提供する。そのための手段として、私たちは『Hit法』による可視化を全ての土台に据えています。業務を可視化して初めて、どこをRPA化すべきか、どこにデータを詰め込むべきかという『正しいデータ活用』のスタートラインに立てるのです」
3.実績に裏打ちされ、現場に寄り添う各種ツールの採用
ワークスアイディが顧客の課題に応じて提案するソリューションは、徹底して「現場の習熟しやすさ」と「導入の手軽さ」を基準に厳選されています 。
- RPA(WinActor / BizRobo / Blue Prism)メインで活用する『WinActor』は純国産のRPAであり 、画面が日本語で直感的に操作できるため、地方自治体の職員や中小企業のビジネスパーソンに馴染みやすく、習熟が早いのが特徴です 。一方で、大規模なエンタープライズ向けやJ⁻SOX対応が必要なケースには『BizRobo』や『Blue Prism』を使い分けるなど 、企業の規模やガバナンスに応じた柔軟なプラットフォーム体制を整えています。
- SaaS型業務構築(kintone)自社での徹底的な活用実績を経て、パートナーとともに業務改善のプラットフォームとして採用 。コロナ禍においては、このkintoneのプラグインを駆使したワクチン接種申請システムを地方自治体へ導入しました。住民がスマホから希望日やワクチンの種類を入力すると、自治体側のデータと即座に連携される仕組みを短期間で構築し、職員の膨大な手作業と郵送の手間を劇的に削減することに成功しました 。
- AI・AI-OCR(DX-Suite / neoAI Chat / つなぎAI)紙書類の多い自治体業務には、高精度な国産AI-OCR『DX-Suite』を提案し、RPAとの自動連携でデータ入力を効率化 。さらに、直近では『neoAI Chat』などの生成AIプラットフォームをアシスタントとして手軽に導入できる環境や 、WinActorと連携する『つなぎAI』を活用し 、単なる効率化を超えたトータルソリューションを構築しています。

4.自治体と民間企業、それぞれのブレイクスルー
ワークスアイディが支援を行った企業・自治体では、業務可視化やRPA・ツール活用を通じて確かな成果が生み出されています
① 国内大手のIT商社でのコスト削減実績
自社での導入効果に注目した国内大手のIT商社からお声がけいただき、同社のオペレーションセンターの業務改善に着手。年間1億円規模の削減効果を創出したことで、同社がワークスアイディの主要販売パートナーとなり、全国の自治体や地方企業へと一気にサービスが広がるきっかけとなりました。
② コロナ禍におけるワクチン接種申請業務(自治体事例)
住民が市役所へ足を運ぶのが難しいコロナ禍において、SaaS型プラットフォーム「kintone」のプラグインを活用した申請システムを導入。住民がスマホから接種希望日などを入力すると自治体側のデータと即座に連携する仕組みを作り、職員の手間を劇的に削減しました。
③ 地方の食品製造メーカー様(製造・受発注業務におけるBPR事例)
全国に商品を展開する地方の食品製造メーカーの現場では、日々大量に届く注文データの入力や集計、取引先ごとのフォーマット調整といった手作業に追われ、現場スタッフの残業が慢性化していました。 ワークスアイディの伴走支援のもと、現場に馴染みやすい純国産RPA「WinActor」を導入。手入力で行っていた受注データのシステム転記や集計業務を自動化しました。 その結果、導入1年目で年間約3,000時間、ピーク時には月間最大で約520時間もの業務時間削減を達成し、入力ミスも激減。単なるコスト削減に留まらず、追われる作業から解放された現場スタッフが定時退社できる環境を作り出し、全社的なDXと業務改革を実現しています。(※詳細はワークスアイディ株式会社の導入事例ページを参照)

6.抵抗を乗り越える「草の根」の巻き込み方と専任担当者の重要性
どれほど優れたツールや成功事例があっても、地方自治体や企業の現場に導入する際には、必ずと言っていいほど「心理的抵抗」が生まれます。「自分の仕事が奪われるのではないか」「2〜3年で異動するのに、なぜ新しい技術を覚えなければならないのか」「今のままで困っていない」といった現場の本音に対し、鈴木氏らは正面から、かつ丁寧に寄り添い続けてきました。
同社がプロジェクトの最初に必ず実施するのが、導入前の「啓蒙セミナー(説明会)」です。
「『上層部から言われたから協力しろ』では、現場は絶対に動きません。むしろ『あなたのワークライフバランスを守るためにやるんですよ』『毎月30時間かかっているこの転記作業が10時間に減ったら、ご家族と過ごす時間が増えませんか?』と、徹底的に相手(現場)のメリットに変えて説明します。エンジニアだけでなく、営業やコンサルティングに関わるメンバーがチームとなり、実利を見せながら丁寧に不安を解消していくのです」
また、全体へ一気に広げるのではなく、まずは特定の事業部署からスタートする「スモールスタート」を強く推奨しています。1つの部署で劇的な成功事例を作り、その喜びの声を共有会などを通じて横展開していくことで、ボトムアップ(草の根的)に組織全体へ広がっていくのが同社の必須パターンです。
そして、DXやデータ活用を成功させる最大の分岐点として鈴木氏が挙げるのが、「兼任ではなく、せめて1人の『専任担当者』を立てること」です。 既存の業務を100%抱えたまま、新しいプロジェクトをアドオン(上乗せ)されると、現場の管理工数は膨大になり、どうしても日々の業務に追われてプライオリティが下がってしまいます。 鈴木氏はこう語ります。
「専任担当者を立てると言うと、『うちにはITに詳しい若い人がいない』と頭を抱える経営者や首長の方が非常に多いです。ですが、年齢や性別、これまでのIT知識の有無はまったく関係ありません。一番大切なのは、『これは今までこうやっていたからしょうがない』という固定観念に縛られず、『もっと良くできるのではないか』という柔軟な思考と、部門間のコミュニケーション能力を持っていることです。そういう担当者を1人据えるだけで、組織は内側から確実に変わり始めます」


7.人が人らしく輝くための「50」の余白
ワークスアイディが提供する伴走支援の本質は、データを集めて分析することそのものではありません 。データやRPAによって業務を効率化した先に生まれる「時間と心の余裕(余白)」こそが、真の価値だと考えています。
「今まで100の力で行っていたルーティン業務が、可視化と自動化によって50になったとします。では、浮いた50の余白をどう使うか。ここに地方創生の鍵があります。 自治体の例で言えば、高齢者の方が増える中で、窓口のデジタル化やタッチパネル、スマホでの申請についていけない方もたくさんいらっしゃいます。業務が効率化されたことで、職員がその高齢者の方への手厚い対面サポートに人員を割くことができるようになった。結果として、住民の方から直接感謝の言葉をいただいたというお声をよく耳にします。
民間企業であれば、ルーティンワークから解放された社員が、新しい商品の企画や、顧客との深いコミュニケーションといった『付加価値を生む仕事』にシフトできます。人が人たる所以、人でなければできない領域のサービスを現状プラスアルファで維持・強化していくこと。それこそが、私たちが実感している最大の社会貢献です。」
同社は今、これまでのDX(デジタルトランスフォーメーション)から、AIを中核に据えた経営戦略や業務プロセスの変革である「AX(AIトランスフォーメーション)」への進化を加速させ、生成AIやAIエージェントを包括したトータルソリューションを提供しています。劇的に変わる働き方の潮流の中で、ユーザー側の理解度が追いつかない部分を 、これまでと変わらない「可視化からの丁寧な伴走」で支えていく決意です。
おわり:「知らないことは悪ではない」
最後に、データ活用やDX、AIの導入に悩み、どこから手を付ければいいのか分からずに足踏みを続けている全国の企業・自治体の担当者へ、鈴木氏からメッセージをいただきました 。
「日本人の特性として、やり方が分からないときに『知らない』と言うのを恥ずかしいと感じたり、悪だと思ってしまう傾向があるかもしれません。ですが、知らないことは決して悪ではありません。むしろ、知らないと言えることの方が誠実だと私は思っています。 ワークスアイディはDXの会社であると同時に、人材の会社でもあります。人の観点、組織マネジメントの観点、そしてITの観点から、本質的な課題がどこにあるのかを一緒に深掘りしていくのが私たちの得意領域です。『とにかく残業が増えている』『AIを使ってみたいけれど何ができるか分からない 』といった、大まかな小さなお悩みで構いません。困っていることがあれば、まずは改善の一歩として、いつでも私たちにご相談ください。」
ワークスアイディが描く未来は、最先端の技術で埋め尽くされた冷たい世界ではなく、技術によって生み出されたゆとりの中で、人がもっと面白く、人間らしく輝く温かい世界です 。
「手段の目的化」という罠に陥ることなく 、まずは自らの業務を「知る(可視化する)」ことから 、地方創生への新しい扉を開いてみませんか。ワークスアイディという心強い伴走者が、あなたの街や企業の次の一歩を、すぐ隣で支えてくれるはずです 。
【取材協力】ワークスアイディ株式会社
「働くをもっと面白くするデザインカンパニー」をビジョンに掲げ、データやデジタル技術を駆使した企業の生産性向上、ビジネスモデル変革(DX/AX)を総合的に伴走支援。業務可視化メソッド「Hit法」を基盤に、RPA(WinActor等)やkintone、AI・AI-OCRを組み合わせた「現場発の内製化支援」に強みを持ち、全国の民間企業や地方自治体の課題解決に貢献。
企業サイト:https://www.worksid.co.jp/








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