データ活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が飛び交う昨今。しかし、リソースの限られた地方自治体や中小企業の現場では、「専門家がいない」「システムを入れても使いこなせない」という壁が立ちはだかっているのが現実です 。
そんな中、特定の高度な技術に頼るのではなく、現場の人々が「今、どう動くべきか」を自ら判断するための“日常の道具”として注目を集めているのが、株式会社インテリジェンス・ワークスの提供する「電脳地蔵(でんのうじぞう)」です 。同社取締役会長の矢島正樹氏(以下、矢島氏)と代表取締役社長の荒木貴代美氏(以下、荒木氏)に、データ活用を専門家の手から現場の日常へと取り戻すための「地方創生×データ活用」のあり方について、お話を伺いました。

株式会社インテリジェンス・ワークス 取締役会長矢島正樹氏と代表取締役社長 荒木貴代美氏
1.開発の背景:データはあるのに「誰も使えていない」現実
「データは集まっているのに、誰も使えていない現場が非常に多い」 。荒木氏は、企業や地域の現場で何度も目にしてきたこの課題が、サービス開発の原点だったと語ります 。
センサー、受付システム、Excel、日報など、情報自体は存在していても、それが実際の“判断”や“行動”に結びついていないケースが多くありました 。特に地方の中小企業や自治体においては、以下のような深刻な課題が共通して存在していました 。
- 専門人材の不在:データを分析できる専門人材がいない 。
- 運用の形骸化:システムを導入しても現場が使いこなせず、宝の持ち腐れになる 。
- 判断の属人化:数値を見ても「どう行動すればいいか」分からず、結局は勘や経験に戻ってしまう 。
- リソースの枯渇:人手不足で、データをじっくり見る時間的・精神的な余裕がない 。
こうした「現場の分断」を解消するために生まれたのが、電脳地蔵です 。同社が目指したのは、「分析できる専門家を増やす」ことではなく、「専門知識がなくても、現場の人が“今どうするか”をその場で判断できる仕組み」を作ることでした 。
2. 「電脳地蔵」という名に込めた、現場への寄り添い
「電脳地蔵」というユニークな名称には、深い想いが込められています。
「お地蔵様は、目立たず、命令もせず、ただそこにいて人を見守る存在です 。電脳地蔵も同じように、現場の人に代わって考えるのではなく、『気づき』と『選択肢』をそっと差し出す存在でありたいと考えました 」。
この哲学は、システムの設計思想にも貫かれています 。技術的に“最先端”であることを競うのではなく、現場のPCやタブレットで完結でき、ネットワーク環境に依存しすぎない「誰でも運用でき、現場に定着すること」を最大の価値としています 。
また、インタビューでは「電脳地蔵ファミリー」についても触れられました 。高齢者や子供を静かに見守り、異変があれば通知する役割など、親しみやすいキャラクターを通じて、ITに対する心理的ハードルを下げる工夫が凝らされています 。

3. 「報告のためのデータ」から「行動のための材料」へ
電脳地蔵が扱うのは、人の出入りや滞在状況、設備の使用状況といった、現場で日常的に自然発生する「行動データ」です 。
従来のデータ活用は、以下のような流れが一般的でした 。
1.データを集める
2.Excelにまとめる
3.報告書を作る
4.上長や管理側が後から判断する
しかし、電脳地蔵はこの流れを根本から変えます 。データは自動で集まり、現場で見て直感的に分かり、その場ですぐ動ける 。つまり、“報告のためのデータ”から“行動のための材料(材料)”に変えた点が最大の違いです 。 荒木氏は「データは『後から説明するためのもの』ではなく、『今、動くための材料』として使われているのです」と強調します 。
4.専門家はいらない。現場の人が主役になる「日本語プログラミング」
電脳地蔵の最大の特徴は、ITの専門知識がない人でも直感的に扱えるインターフェースにあります 。同社は、「プログラミングというと壁が高いという印象を、もっと身近なものにしたい」という想いから、あえて「日本語プログラミング」を採用しました 。
「英語でのプログラミングは変数名一つとっても理解が難しく、専門外の人にはハードルが高いものです 。それを日本語で、普通の口頭文のように組めるようにしました」と荒木氏は語ります 。これにより、専門家に頼り切りになるのではなく、中の人間が自ら試行錯誤しながら仕組みを作ることが可能になります 。
さらに、よく使われる機能は「情報部品シード」としてあらかじめ用意されています 。ユーザーはこの部品をパズルのように組み合わせるだけで、専門家に頼ることなく、自分たちの思い描いた通りに物を動かすことができます 。 「まずは身近なものを動かしてみませんか? 日本語の部品を選んで設定するだけで、目の前の扇風機が回ったり、ライトが光ったりする。その瞬間、『自分たちの手で動かせた!』という大きな感動が生まれます」と荒木氏は語ります 。この直感的な成功体験こそが、現場の主体的な改善活動を加速させるエンジンとなるのです。

5. 全国で生まれる具体的な成果と「納得感」
電脳地蔵の導入により、地方の現場では具体的な変化が次々と生まれています。
- 公共施設・自治体での運営改善:職員の感覚や報告に頼っていた利用実態を数値化 。開館時間の見直しやイベント企画の改善、管理コストの適正化を、職員自身が根拠を持って行えるようになりました 。
- 郵便局でのホスピタリティ向上:三鷹市内の郵便局では、入退室を検知して自動で挨拶を流すエントランスシステムを導入 。忙しい局員に代わって「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と声をかけることで、接客に関するクレームが激減しました 。
- 店舗・施設での効率化:時間帯ごとの人の動きを可視化することで、無理な人員増加をせずにスタッフ配置を最適化 。人手不足が深刻な地方において、サービスの質を保ちながら運営効率を改善しています 。
同社は、こうした変化の本質を「判断が現場に戻ったこと」だと表現します 。現場の担当者が自分の目で状況を確認し、納得して動けるようになることで、改善提案が「感想」ではなく「根拠ある提案」として組織に正当に評価されるようになるのです 。
6. 1アカウント9,000円から。地方だからこそ「小さく始める」
地方の現場には、「予算がない」「IT人材がいない」「システムを入れても運用が続かない」という三重苦があります 。
だからこそ、電脳地蔵は1アカウント9,000円からという導入しやすい価格設定となっており 、サブスクリプションではなく「売り切り」であることも、予算の立てにくい地方組織には大きな魅力です 。
「最初から正解を求めなくていい、大きく始めなくていい」 。荒木氏が語る、まずは現場で起きていることを“見える化”し、日本語プログラミングでパトライトが回るような、目の前の小さな変化を楽しむことから始めてほしいというメッセージには、地方のDXを成功させるための真理が詰まっています 。
7. 今後の展望:データの「つながり」と「予測」へ
インタビューの後半、矢島氏は電脳地蔵が描く未来の姿を熱く語ってくださいました。
「今後は、『より少ない負担で、より多くの判断ができる』方向へ進化させていきたいと考えています」 。 具体的には、現場で蓄積されたデータをもとに「次に何が起きそうか」を示す需要予測の仕組みや 、複数の拠点・施設をまたいで状況を俯瞰できる「データのつながり」の構築を構想されています 。
さらに、業種や地域を超えて「気づきの型(改善のモデル)」を共有できるプラットフォームも視野に入れています 。しかし、そこでも「技術が前に出すぎないこと」を最優先にしています 。 「AIや高度な分析は、あくまで人の判断を助ける道具です 。現場で使い続けられるためには、ITが主導するのではなく、人が主役であり続けなければならないと考えています」 。
おわりに: 地方創生の真の姿:自立する人と地域
同社が考える地方創生は、外から人や高価な仕組みを持ち込むことではありません 。 「地域の中にある人、知恵、経験が、データによって活かされ続ける状態をつくること 。地方にIT人材を依存的に呼び込むのではなく、今いる人が“自分たちで判断できる力”を育てる 。それが結果として、人材の定着、組織の自立、そして持続可能な地域運営に繋がると信じています」 。
データ活用が「特別な取り組み」ではなく、地域運営の「日常の道具」になること 。電脳地蔵が照らすのは、データという光によって、人と地域が自信を持って自立していく、そんな温かな未来の姿でした 。
【取材協力】株式会社インテリジェンス・ワークス
東京都三鷹市に拠点を置き、自律型プラットフォーム「電脳地蔵」や「IWStation」の開発・販売を手掛ける企業 。ソフトウェア開発から音声音楽コンテンツ制作まで幅広く展開し、ITの専門知識がない現場でも自走できるデータ活用の普及を目指している 。地域に密着した課題解決を支援し、人と地域が自立できる持続可能な社会の実現に貢献 。
企業サイト:https://www.intelligenceworks.co.jp/









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