地方自治体や企業にとって、避けては通れない「防災」という課題。しかし、その現場を支える「防災備蓄」の管理は、今なおアナログで属人的な運用に依存しているケースが少なくありません。
今回お話を伺ったのは、防災領域に特化したmilab(ミラボ)株式会社の代表取締役社長、狩野 貴史氏です。同社が展開する防災備蓄管理システム「BxLink®(ビーリンク)」は、単なる在庫管理を超え、自治体や企業、さらには国をデータでつなぐ「防災プラットフォーム」を目指しています。地方創生におけるデータの役割、そして「現場のDX」がもたらす価値について、狩野氏の想いと共に紐解きます。

milab株式会社 代表取締役社長 狩野貴史氏
1.災害関連死をなくしたい――現場の「痛み」から生まれたビジョン
milab株式会社は、BELLグループの社会課題解決型事業の一環として2023年に設立されました。「災害時に誰一人として取り残されない社会をつくる」という強いビジョンの背景には、東日本大震災の教訓があります。津波から命を守り抜いたにもかかわらず、避難所での環境悪化により亡くなってしまう「災害関連死」。この悲劇を二度と繰り返さないためには、避難所に必要な物資が、必要な人に、必要な分だけ迅速に届く仕組みが不可欠です。
しかし、実際の防災現場を見渡すと、備蓄品の管理は90%以上がExcelや紙の台帳による「属人化した管理」に頼っているのが実情です。どこに何がどれだけあるのか、賞味期限はいつまでか。いざという時に「見える化」されていない情報の欠如が、迅速な救命活動を阻む大きな壁となっていました。
2.Excel管理の限界を突破する、現場起点のシステム「BxLink®」
こうした現場の課題を構造的に解決するために生まれたのが、防災備蓄管理システム「BxLink®」です。
従来のExcel管理では、情報の更新漏れや、複数拠点にまたがる在庫の把握が困難でした。特に自治体では、担当者が数年で交代する人事ローテーションがあり、引き継ぎが不十分なまま「実態のわからない備蓄」が放置されるリスクも抱えています。
「BxLink®」は、これらをクラウド上で標準化し、一元管理できるようにします。特筆すべきは、その多機能性です。想定避難者数や住民の属性(女性、高齢者、乳幼児など)に基づいた「備蓄シミュレーション機能」、賞味期限の自動通知、さらにはスマートデバイスを活用した「現場での棚卸し支援」など、現場の負担を減らしながらデータの精度を高める工夫が凝らされています。

▶ BxLink サービス紹介
https://www.milab.bell-group.jp/service/bxlink.php
企業のBCPを支え、社会貢献をカタチにする
「BxLink®」の価値は自治体だけに留まりません。企業にとっても、BCP(事業継続計画)の実効性を高め、災害時に従業員の安全を確実に確保するための強力な基盤となります。
備蓄品の不足や過剰、期限切れのリスクを可視化し、計画的な更新を可能にするこの取り組みは、単なる管理ツールを超えた社会的意義を持つものとして高く評価されています。その証左として、同システムは「ASPICクラウドアワード2024 社会貢献賞」を受賞しました。企業の防災への取り組みが、データを通じて地域社会のレジリエンス(復元力)向上に直結していることが、公に認められたのです。
▶ ASPICクラウドアワード2024 社会貢献賞受賞
https://www.milab.bell-group.jp/service/bxlink.php
3.新システム「B-PLo」との連携で、自治体の負担を「価値」に変える
現在、日本全体で防災DXが加速しており、内閣府は各自治体の備蓄情報を集約するシステム「B-PLo(ビープロ)」の運用を推進しています。しかし、現場では「国への報告のためにデータを打ち直す」という二重事務が新たな負担となっていました。
「BxLink®」はこの点にいち早く対応し、現場の管理データがそのまま「B-PLo」へ自動連携される仕組みを構築しています。これにより、自治体職員は日常業務を行うだけで、自動的に国への報告義務を果たすことができ、行政全体のデータ品質向上にも寄与しています。

4.“データの共助”が、地域のレジリエンス(復元力)を最大化する
狩野氏は、防災こそが「究極の共助」であるべきだと語ります。一つの自治体や企業だけで備えるのには限界があります。災害時には自社の倉庫が被災することもあるでしょう。その時、隣接する自治体や地元の民間企業とデータを共有し、互いに支え合える体制が整っているかどうかが、地域の命運を分けます。
「データを標準化し、共有可能な状態にしておくことは、単なる効率化ではありません。それは、地域全体で命を守るための『新しい社会インフラ』を構築することなのです」
システムを通じて自治体と民間企業、そして地域住民が有機的に結びつく。この「データの共助」こそが、地方創生における強靭な基盤となります。
おわりに:未来の防災を皆様と共に創造する「ラボ」として
milabという社名には、「未来(mirai)の防災を皆様と共に創造する研究所(lab)」という想いが込められています。防災を一過性の対策で終わらせるのではなく、次世代の若者たちが積極的に関わり、成長できる「産業」へと昇華させること。それが同社の使命です。
データ活用に踏み出せないビジネスパーソンや自治体担当者にとって、DXは遠い世界の言葉に聞こえるかもしれません。しかし、目の前の備蓄品一つひとつの情報を「正しく整える」という小さな一歩が、確実に誰かの命を救う力へと変わります。
「誰も取り残されない社会」の実現へ。milabが描くデータの未来は、日本の地方から着実に動き始めています。
【取材協力】milab株式会社
「未来の防災を皆様と共に創造する」という想いを社名に掲げるmilab株式会社は、BELLグループの社会課題解決型事業として2023年に設立。
同社が提供する防災備蓄管理システム「BxLink®」は、属人的になりがちな備蓄管理をデータで「見える化」し、標準化することで、平時の業務効率化と有事の迅速な対応を両立させ、自治体・民間企業・地域住民が連携する「共助」の仕組みをシステムを通じて構築し、社会全体のレジリエンス向上に貢献。
https://www.milab.bell-group.jp/












4-485x273.png)






