現場の「暗黙知」を資産に。運用重視型AI「Omi!Chat」

MiDATA様インタビュー06

「データ活用が重要だとは分かっている。しかし、現場は何から手をつけていいか分からない」 「AIチャットボットを導入したが、回答精度が低く、結局誰も使わなくなった」

急速に進化する生成AI技術に対し、多くの組織が業務変革への期待を寄せています。しかし、いざツールを導入しても、現場の業務フローやリテラシーとかみ合わず、定着しないケースが後を絶ちません。最先端の技術を、リソースの限られる現場でどう活用し、成果に結びつけるか──それは、地域企業や自治体が直面する共通の課題でもあります。

沖縄県を拠点の1つににデータ利活用支援を展開する株式会社MiDATAは、データサイエンスの最前線で培ってきた高度な知見を、こうした地域の現場課題へ還流させるべく奔走するプロフェッショナル集団です。彼らが、業務提携先の株式会社沖縄ソフトウェアセンター(OSC)と共同開発した『Omi!Chat(オーマイチャット)』は、単なる自動応答ツールではありません。導入後の“運用”にとことん寄り添い、組織の成長と共に育っていく「運用重視型AIチャットボット」です。

なぜ彼らは「運用」にこだわるのでしょうか。そして、データ分析の専門家集団が考える「地方創生×データ活用」の真髄とは何か。同社の沖縄ビジネス推進責任者である川畑拓也氏と、AI領域の事業・営業戦略を担う中村祐子氏の言葉から紐解いていきます。

株式会社MiDATA 沖縄ビジネス推進責任者 川畑拓也氏

1.地方の現場を阻む「アナログの壁」と「暗黙知」

「沖縄県内の中小企業様をご支援する中で痛感したのは、ドキュメント管理の難しさでした」と川畑氏は語ります。

地方の現場では、業務マニュアルや社内規定がいまだに紙ファイルで棚に眠っていたり、個人のPC内のExcelに点在していたりすることが珍しくありません。必要な情報を探すだけで長い時間がかかり、さらには「あの人に聞かないと分からない」という属人化、いわゆる「暗黙知」が業務効率を著しく下げています

かつて、こうした課題をAIで解決しようとすれば、数千万円のコストと専任のデータサイエンティストが必要でした。しかし、生成AIの進化により、今や月額数千円レベルから高度な技術が利用可能になりました。これは予算の限られる地方企業にとって千載一遇のチャンスと言えます

MiDATAが目指したのは、社内に散らばる多様なドキュメントをAIに学習させ、社員が必要な時に即座に回答を得られる仕組みです。しかし、彼らは既存のチャットボットにはない「ある機能」をサービスの核に据えました。

2.「導入したのに使われない」を防ぐ。“RAG-Ops”という発想

多くの企業が陥る罠、それは「AIチャットボットを作って終わり」になってしまうことです。 ドキュメントは日々更新され、現場のニーズも変化します。情報が古いままだとAIは間違った回答(ハルシネーション)をし始め、社員は「このAIは嘘をつくから使えない」と離れていってしまいます。業務の属人化を排除するために導入したはずのAIが、メンテナンスの面で属人化してしまうという本末転倒な事態になりかねません

そこで『Omi!Chat』が設計思想として採用しているのが、近年AI運用の要として注目される「RAG-Ops(ラグ・オプス)」という概念です。AIチャットボットを導入するだけでなく、それを「育てやすく、管理しやすい」ための機能を充実させました。

例えば、ユーザーが「何を聞いているか」「どこでつまづいているか」を可視化するログ分析機能があります。 「コーポレートカードの使い方」に関する質問が多発していれば、その部分のマニュアルが不親切である可能性が高いといえます。そうした業務課題をダッシュボードで発見し、管理者が適切な回答(ナレッジ)を追加・修正できるサイクルを構築しています

「分析結果は、単にチャットボットの精度を上げるだけでなく、業務プロセスそのものの改善や社員教育の施策立案にも活用できます」と中村氏は胸を張ります

3.データ分析のプロだからできる「前処理」の技術

『Omi!Chat』のもう一つの大きな強みは、AIに学習させるデータの「前処理」技術にあります。 社内ドキュメントは、画像が貼り付けられたPDF、手書きのメモ、複雑なレイアウトの文書など、形式がバラバラです。これらをそのままAIに投げても、正しく理解させることは困難です

MiDATAはもともと、統計解析やデータ分析を専門としてきた会社です。大量のデータをビジネス価値に変えるための「加工・前処理」において、長年のノウハウがあります。今回の開発でも、どんなに複雑な形式のPDFや非構造化データであっても、AIが最も解釈しやすいテキスト形式に変換する独自のプログラムを組み上げました

「段組が複雑な資料や注釈が入った資料でも、ボタン一つでAIに最適な形へ変換できるようにしています。この『前処理』の精度が、最終的な回答の質を大きく左右します」(川畑氏)

地味に見えるかもしれませんが、この技術力こそが、実業務で「使える」AIを実現するための鍵なのです。

4.「何が怖いか分からない」に寄り添う“伴走支援”

機能面での優位性に加え、MiDATAが最も重視しているのが「伴走支援(コンサルティング)」です。 地方企業や自治体では、「情報漏洩が怖い」「誰が責任を取るのか」といった漠然とした不安から、導入に二の足を踏むケースが多く見られます

「具体的になにがリスクなのかが見えていない、いわば“お化けが怖い”状態のお客様も多いです。だからこそ、私たちが『何がリスクで、何がそうでないか』を整理し、ガイドライン策定からお手伝いします」(川畑氏)

ツールを入れること自体が目的ではありません。現場の業務フローにどうAIを組み込めば効果が出るのか、そもそも「自分の業務のどこでAIが使えるのか」という初歩的な疑問から一緒に考え、定着までをサポートします。この泥臭いまでの「伴走」こそが、地方のDXを成功させる唯一の道だと彼らは確信しています。

おわりに:データ活用で、地方の未来を拓く

「まずは沖縄県内の労働生産性を向上させたい」と川畑氏は力を込めます。 問い合わせ対応時間の短縮や新人教育の効率化が実現できれば、社員は人間にしかできない創造的な業務や、ホスピタリティあふれる対人業務に時間を使えるようになります。さらに将来的には、複雑な補助金・助成金情報をAIが集約し、中小企業に提案するような自治体向けサービスの構想もあるそうです。

「データ活用」や「AI」は、もはや都市部の大企業だけのものではありません。人手不足が深刻な地方企業こそ、テクノロジーの力を必要としています。膨大なデータをただ管理するのではなく、AIで活かすことで、組織全体の知識活用を飛躍的に高めることができます。もし活用への不安があるなら、ぜひ私たちに相談してください」

MiDATAの挑戦は、沖縄から全国へ。 「データはあるが、活用できていない」「ベテランのノウハウが消えそうだ」。そんな課題を持つ地方企業にとって、『Omi!Chat』は心強いパートナーとなるはずです。

【取材協力】 株式会社MiDATA

沖縄と東京を拠点に、AI・データ分析のコンサルティングおよびソリューション開発を展開。「データ活用」のプロフェッショナルとして、企業のDX推進や人材育成を支援している。

企業HP:https://midata.co.jp/