日本全国のオープンデータ活用事例まとめ 2025年版(自治体別)

オープンデータとは、政府や自治体が保有する交通、防災、観光、福祉など幅広い分野のデータを誰もが自由に利用できる形で公開する取り組みです。
近年、自治体がこのデータを活用し、地域課題の解決や住民サービスの向上を図る事例が全国で増えています。
特に2025年現在、生成AIやIoTとの連携も進み、オープンデータの可能性はさらに広がっています。
本記事では、日本各地の自治体がどのようにオープンデータを活用しているのか、最新の注目事例を厳選してご紹介します。

オープンデータの活用とは?

オープンデータとは行政が持つデータを誰もが自由に使える形で公開されているシステムです。
ここでは、オープンデータの活用によって生まれるメリットや、国の取り組み、実際にどのようなデータが公開されているのかを見ていきましょう。

データ活用がもたらすメリットとは?

オープンデータを活用することで、行政の透明性が高まり、住民との信頼関係が深まります。
交通情報の可視化によりバス路線の最適化、防災データの活用で災害時の対応が迅速化など民間事業者による新サービスの創出や、NPOとの協働、行政サービスの効率化にもつながります。
結果、住民生活の質を高める手段と成り得ることから、大きな可能性を秘めています。

国が推進する背景にあるもの

オープンデータは、単なる情報公開ではなく、国策としても重視されています。
デジタル庁の設立や「デジタル田園都市国家構想」の推進などを背景に、自治体が積極的にデータを開放する流れが加速中です。
特に地方創生やスマートシティ構想では、地域課題を可視化し、データドリブンで解決する取り組みが求められています。オープンデータは、その基盤として重要な役割を果たしているのです。

どんなデータが活用されている?

各自治体では、さまざまなジャンルのデータが公開されています。
人口動態や高齢化率、防災マップ、観光施設の位置情報、交通量調査、空き家の状況など、実に多岐にわたります。このようなデータはCSVやGeoJSONといった形式で提供されており、開発者や研究者が簡単に取り込めるよう工夫されています。
特に地域資源としてのデータは、行政だけでなく住民や企業にとっても大きな価値を持ち始めています。

自治体別|注目の活用事例

全国各地の自治体では、オープンデータを活用して地域特有の課題に取り組む事例が数多く見られます。
ここでは、その中でも先進的かつ実用的な7つの取り組みを紹介します。都市部から地方都市まで、地域の特性に応じたデータ利活用の工夫に注目してください。

東京都渋谷区|AIとオープンデータで「ごみの見える化」を実現

渋谷区では、地域のごみ収集業務の最適化にオープンデータとAIを活用しています。
収集ルートや回収量の履歴と、気象・イベントデータ、人口の流入出といった外部のオープンデータを組み合わせることで、「どこで・いつ・どれだけ」ごみが発生するかを予測するシステムを構築しました。
これにより、曜日やエリアごとに効率的なルート設計が可能となり、運搬コストの削減とCO₂排出の抑制にも成功しています。住民サービスの質も向上し、スマートシティ実現の一歩として注目を集めています。

参考:国立大学法人 鹿児島大学・スマホアプリとAIで街中のごみ量を可視化

北海道札幌市|積雪状況をリアルタイムで可視化

豪雪地帯である札幌市では、除雪作業に関する透明性と利便性を高めるため、「除雪マップ」をオープンデータで提供しています。
市内各所の積雪量や除雪実施状況を地図上で視覚的に表示することで、住民が「自宅前の道路がいつ除雪されるのか」を把握できる仕組みです。
さらに、このデータを活用して民間の開発者がスマートフォンアプリやWebサービスを開発し、高齢者や子育て世帯の生活支援にも役立てています。
寒冷地ならではの課題に、データの力で柔軟に対応している好例といえるでしょう。

参考:国土交通省・デジタルツインによる冬期道路交通マネジメントシステムの技術開発

福岡県福岡市|地域イベント×観光動態分析で人流を最適化

福岡市では、オープンデータを活用した観光施策として、イベント開催情報と位置情報データを掛け合わせた「人流マッピング」に取り組んでいます。
大型イベントや地域祭りなどの開催に合わせて、市内の人の動きや混雑エリアをリアルタイムで可視化することで、観光客の快適な動線設計や周辺交通機関への負荷分散を実現しています。
また、民間の観光業者や飲食店もこのデータを参考に、集客戦略を柔軟に変更できるため、地域経済の活性化にも寄与するなど、データと民間の好循環が生まれています。

参考:福岡市・福岡市データ連携基盤

兵庫県神戸市|高齢者支援に活きる地域分布データ

神戸市では、地域に住む高齢者の支援を目的に、オープンデータを用いた「見守り支援アプリ」を開発しています。
市が公開する年齢別人口分布や独居高齢者率などの地域データを基に、特に支援が必要なエリアを可視化し、NPOや介護事業者と連携した見守り活動を展開。さらに、郵便局や新聞配達員といった地域に密着した事業者がアプリを活用し、異変の早期発見にもつなげています。高齢化が進む都市部において、行政・地域・民間が連携したデータ活用の好例といえるでしょう。

参考:神戸市・ICTを活用したお子様とご高齢者様の見守り事業~神戸市民の安心と健康、そして人と人のつながりの為に~

長野県塩尻市|公共交通の再編に住民参加型のデータ活用

人口減少と公共交通の維持という課題に直面している塩尻市では、オープンデータを基にした「交通再編プロジェクト」が進行中です。
市はバスの乗降データや地域ニーズ調査を公開し、住民からの意見を収集・反映できる仕組みを整備。
地元高校生によるアイデア提案や、地域企業の協力によるデータ分析など、市民参加型の「共創」によって路線の最適化が図られています。
塩尻市の取り組みは、単なる交通インフラの再編にとどまらず、地域との対話による持続可能な街づくりのモデルケースとして高く評価されています。

参考:塩尻市・塩尻MaaSプロジェクト

宮城県石巻市|津波避難データを活用した命を守る地図づくり

東日本大震災の被災地である石巻市では、津波対策としてのオープンデータ活用が進められています。
市が公開する津波浸水想定区域や避難所の位置情報、過去の被災データをもとに、民間企業や大学と連携してWeb上で自由に閲覧可能で、誰でも自宅や職場から安全な避難ルートを確認できる「津波避難支援マップ」を整備しました。
さらに、AR(拡張現実)と組み合わせた体験型防災教育にも利用され、地域住民の防災意識向上にもつながっています。データを“活かして命を守る”活用例として高く評価されています。

参考:石巻市防災ポータル・津波ハザードマップ(日本語版)

愛知県名古屋市|道路工事情報を可視化して渋滞回避へ

名古屋市では、市内の道路工事に関する情報をオープンデータとして提供し、住民やドライバーがリアルタイムで確認できる仕組みを整えています。
これにより、工事の予定区間や期間、進捗状況が可視化され、渋滞回避や代替ルートの選択が可能となりました。
また、民間のナビアプリや物流事業者がこのデータを活用し、業務効率を高める事例も増加しています。自治体が持つ一見地味な「工事情報データ」が、市民生活や経済活動の質を高める武器になる好例です。

参考:名古屋市道路工事情報

オープンデータ活用の今後の展望

オープンデータの利活用は、今後さらに高度化・多様化していくと見られています。特に注目されているのが、生成AIやIoTとの連携です。
例えば、地域の防災データや人口動態をAIが解析し、リアルタイムに避難ルートや支援物資の優先配分を提示するなど、データの活用が判断支援へと進化しつつあります。
また、環境保全やエネルギー管理といった新たな分野でも、センサーデータとオープンデータを組み合わせた実証実験が各地で進行中です。
さらに、住民や民間企業が参加する「データ・コモンズ型」地域づくりも広がりを見せており、データは行政の専有物から「地域全体の共有資産」へと変化を遂げています。

まとめ

全国の自治体が取り組むオープンデータ活用は、地域課題の解決や住民サービスの向上に大きく貢献しています。ごみ収集の効率化や防災マップ、観光動向の可視化まで、分野も地域も多岐にわたります。
2025年現在、その活用はAIや住民参加との連携によって、さらなる進化を遂げようとしています。データは「ただの数字」ではなく「地域を変える力を持つ資源」です。
自治体、企業、そして私たち一人ひとりがその可能性を共有し、未来のまちづくりに主体的に関わる時代が、すでに始まっています。